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実習での衝撃的な学びで目から鱗
私が養成校3年生だった頃、実習で訪れた東京の病院は、全国的にも先駆けて訪問リハビリを行っている施設でした。当時はまだ介護保険制度もなく、学校の授業でも「訪問リハビリ」や「在宅リハビリ」という言葉すらほとんど聞いたことがありませんでした。
その病院での実習初日に「患者さんを診る際に大切なことは何?」と質問され、私は教科書的な答えをしました。つまり「筋力や歩行の安定性を評価し、問題点を見つけて治療し、出来るだけ早く自宅へ復帰させることが大切」と。しかし、指導者から返ってきたのは意外な言葉でした。
「それは本人が本当に望んでいること?それでその方は幸せなの?」
最初は何を言われているのか分かりませんでした。しかし続けて「なぜ筋力が必要なの?なぜ歩けなければならないの?」と問いかけられました。さらに、「どんな場面で、どのくらい歩くのか?そのためには何が必要なのか?それが今出来ない理由は何なのか?こうした視点があって初めて、筋力や歩行能力を評価する意味が出てくるのでは?」と指摘されたのです。
加えて、「退院のために必要なのは、身体機能だけではない。家庭環境、家の周囲の状況、家族関係、退院後の生活、経済状況など、さまざまな要素を知った上でなければ、適切なリハビリを進めることはできないよね?」と言われました。これまで全く意識していなかった視点を突きつけられ、私は大きな衝撃を受けました。正に目から鱗でした!
この経験を通して、「リハビリは身体機能を改善することだけが目的ではなく、その人がどのような人生を送りたいのかを考えることが大切なのだ」と気づかされました。身体だけを診るのではなく、その人の役割や目標を理解しなければ、本当のリハビリにはならない…そのことを痛感した瞬間でした。
この実習を機に、訪問リハビリに対する関心が高まりました。しかし、岩手に戻り就職してからは、訪問リハビリを実践する機会はなかなか得られませんでした。理学療法士になって10年後に介護保険制度が始まるちょっと前まで、その「訪問リハビリ」という言葉すら身近にない状況が続いたのです…。